お知らせ

2026/03/31

こどもに節度を教えない親

― 食事中のゲーム依存を制止できないということ ―

親子で外食をしている場面を見かけると、食事が運ばれてくるまでの時間や、食後のひとときに、 子どもがゲーム機やスマートフォンに夢中になっている姿を目にすることがあります。

忙しい毎日の中で「静かにしていてほしい」という思いは、どの家庭にもある自然な気持ちです。 子育ての大変さを知る者として、その思いに寄り添いたいとも感じます。

食卓という大切な時間

しかし、食卓は本来、親子が向き合い、言葉を交わし、心を通わせる大切な時間です。

「今日どうだった?」「これ、おいしいね」といった何気ない会話の積み重ねが、 子どもの安心感や自己肯定感を育て、親子の関係を豊かにしていきます。

その時間が、気づかぬうちにゲームに置き換わってしまうとしたら、 私たちは大切な“育ちの機会”を失ってしまうかもしれません。

「待つこと」も大切な経験

また、食事を待つ時間に退屈を感じること、思い通りにいかずに気持ちが揺れること、 周囲の人に配慮しながら過ごすこと――これらは、 子どもが社会の一員として育っていくために欠かせない経験です。

節度を育てるということ

もし、子どもが食事中にゲームを手放せなくなっているのだとしたら、 それは単なるマナーの問題ではなく、 親が子どもの衝動を受け止め、節度を伝える役割を果たしきれなくなっているサインでもあります。

節度とは、子どもが自分の気持ちを整え、 周囲と調和しながら生きていくための力です。

これは、親が日々の生活の中で 「今はやめようね」「待つ時間も一緒に楽しもうね」と、 丁寧に伝え続けることで育まれていきます。

園としての願い

私たちの園は、子どもを真ん中に、家庭と地域と園が共に育ち合う場でありたいと願っています。

親子で向き合う食卓の時間を大切にすることは、 その理念の延長線上にあります。

おわりに

卒園・進級を迎えるこの春、 子どもたちの未来のために、私たち大人がどんな姿勢を示していくのかを、 改めて一緒に考えていけたらと思います。

今年度のご協力・ご理解、ありがとうございました。 来年度もよろしくお願いいたします。

園長 吉田耕一郎

2026/03/16

子どもたちの「これから」を支える力

無くなる仕事がある時代に、幼児期にしなければいけないこと

「この子は、将来どんな仕事に就くのだろう」――子どもたちの寝顔を見ながら、そんなことを考えたことがある方も多いと思います。 最近は、AI、IT、自動化といった言葉が身近になり、「将来、仕事はどうなるのだろう」「今ある仕事は残るのだろうか」と、 不安を感じる場面も増えてきました。

そこで今回は、仕事が変わっていく時代に、幼児期に何を大切にすべきかという視点から、お話しします。

無くなっていく仕事、形を変える仕事

これからの社会では、すべての仕事が同じ形で残るわけではありません。

たとえば、

  • 決められた手順を繰り返す仕事
  • 判断を伴わない単純作業
  • マニュアル通りに処理する事務的な仕事

こうした仕事の一部は、すでに機械やAIに置き換わり始めています。 これは「良い・悪い」という話ではなく、社会の仕組みが変わっていくということです。

それでも、無くならない仕事があります

一方で、今も、そしてこれからも人手不足が続くと考えられている仕事があります。

保育や教育、医療や介護、技術職や職人の仕事、物流や公共サービスなどです。

これらの仕事に共通しているのは、人と関わり、その場で考え、状況に応じて判断する必要があることです。 正解が一つではなく、相手や環境によって対応を変える。こうした仕事は、機械には任せきれません。

仕事の「中身」が変わる時代

大切なのは、「この仕事は残る」「この仕事は無くなる」と単純に分けることではありません。 多くの仕事は、中身が変わっていくのです。

同じ職業名でも、考える力や判断する力、人と関わる力が、これまで以上に求められるようになります。 だからこそ、特定の職業に早くから当てはめるよりも、どんな変化にも対応できる力が重要になります。

失敗しても、また立ち上がれる力

園で大切にしている力の一つが、レジリエンスです。いわゆる「立ち直る力」です。 思い通りにいかず、悔しい思いをしたとき、友だちとぶつかってしまったとき。 そうした経験は、幼児期には日常的に起こります。

教育心理学の研究でも、こうした経験を通して、気持ちを立て直し、再び行動する力が育つことが示されています。

📌 注釈

園生活の中での小さな困難への向き合い方が、子どものレジリエンスと関係していることが研究から示されています。 将来、仕事の形が変わっても、失敗や戸惑いは必ずあります。そのときに、折れずに立ち直れる力は、 どんな仕事に就いても、その人を支えます。

困難な状況に立ち向かい、正解ではなく、最適解を見つけ出す力

もう一つ大切にしているのが、エージェンシーです。 これは、予測不能な社会の中で、困難に向き合い、自分あるいは仲間とともに、最適な解決策を見つけ出していく力です。

以前と違うのは、「正解がない」ということです。 これからの社会で生きていくには、困難な状況の中でも考え、選び、工夫しながら進んでいく力が必要になります。

遊びの中で、やりたいことを選び、うまくいかなくても工夫する経験は、まさにこの力の芽です。

世界でも重視されている幼児期の力

国際的な幼児教育の研究や方針でも、レジリエンスやエージェンシーは、 変化の大きい社会を生きるための重要な力として位置づけられています。

📌 注釈

世界的にも、幼児期からこれらの力を育てることが重視されています。

幼稚園で育てているもの

幼稚園は、将来の職業を教える場所ではありません。

しかし、仕事が無くなる・変わる時代だからこそ、どんな仕事にも向き合える土台を育てる場所だと、私たちは考えています。 転んで泣いたあとに立ち上がること。迷いながらも、自分で選ぶこと。友だちと関わり、折り合いをつけること。

その一つひとつが、将来、仕事の形が変わっても、子どもたちを支える力になります。

おわりに

将来、どんな仕事に就くかは、今はまだ分かりません。

けれど、変化に対応できる人であるかどうかは、幼児期の経験によって大きく左右されます。

園ではこれからも、目に見えにくいけれど確かな力を、大切に育てていきたいと思います。

園長 吉田耕一郎